LOVE SONG
大抜擢!
「中里っ」
「はいっ」
作詞家の春木隆(ハルキ タカシ)の事務所で電話番をしている作詞家の見習い、中里哀華(ナカザト アイカ)は、事務所に入って開口一番自分の名前を呼ぶ春木の方を振り向いて返事をした。
春木はそのまま自分のデスクに行き、椅子に座る。
中里は、春木のデスクの前に行き、春木を見つめる。
「おはようございます。…なんでしょう?」
「『CityNoize』のアルバムの件だけどな」
「あ、はい」
「お前に決まったそうだ」
「………」
中里はキョトンとしたまま春木を見つめている。
「おい、わかったか?」
「…」
「お前が一人で書く事に決まったんだぞ」
「……うっそ−−!!」
いきなり素っ頓狂な声を出す中里に、事務所にいた他の5人は一斉に哀華の方を振り返った。
「なんで俺がいちいち嘘言わなきゃいけないんだ。ほんとだよ、本当」
春木も大声にびっくりしたが気を取り直して哀華に言い聞かせた。
「決まったからには、しっかりやれよ。これは『中里哀華』のメジャーデビューになるんだからな」
「は、はいっ!」
中里は、自分を落ち着かせるように、大きく深呼吸して、春木の顔を覗き込むように小声で尋ねた。
「…なんで、私に決まったんですか?」