LOVE SONG
「はい」

「けど、そういう不安な気持ちを味わう事によって、自分の愛の深さを再確認するんじゃないのかな?」

「…愛の深さ?」

「幸せの中にいると幸せの有り難さがわかんないのと一緒だよ。不幸になって初めて幸せだったんだとわかるだろ?」

「…はい」

「向こうがどうあれ、中里はしっかり自分を見つめてみるいいチャンスなんじゃないのかな。最後の一曲、中里の愛を書けばいい。成田渋座の曲に乗せてな」

春木は、中里の肩をポンと叩いて事務所を出て行った。

「成田くんの曲に乗せて…」

脳裏に成田の顔が後から後から溢れてきて、その場から動けなくなってしまう中里だった。

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