LOVE SONG
「嘘じゃない。中里とは、これで『サヨナラ』だ」

そう言って不破は立ち上がった。

「不破さんっ」

行こうとする不破をじっと見つめて、中里が尋ねた。

「…もし、あたしが作詞家になってなくて、家で花嫁修行してたら、あたしと結婚してた?」

「…ああ、多分」

「あたしの事、…もう嫌い?」

「嫌いじゃないよ。今でも中里を好きな気持ちは変わらない。ただ…、もう、結婚は出来ない」

「…」

「じゃ」

不破は行こうとして、振り返り、

「いい詞を書けよ」

と、優しい笑顔を残して立ち去る。

一人残された中里は肩を震わせながら、必死に涙をこらえていた…。
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