BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

自らの回りに何が起こっていようが、目の前の人物しか目に移らない彼女には、どうでもよかった…

ただ、この怒りをぶつける事だけしか頭になかった…


ルリは、精一杯剣を振り上げると、ローランに向けて振り下ろす…

が…


その攻撃は空を斬り、力強く振るった剣は、地面に突き刺さった…



 「っ…」

奥歯を噛み締めると、その攻撃を交わしたローランへと目をやった…

怒りからか、それとも、彼女の心のどこかの苦しみからか、ローランを睨む茶色の瞳は、揺れている…



 「そんなに自分の罪を認めたくないのか?」

 「うるさい…」

 「罪を認めろ。名も無き少女。」


名も無き少女…

彼女はその言葉に反応を見せた。

ビクッと体を震わせ、めいいっぱい目を見開く…

グッと握る拳が震え、剣がカタカタと音を立てていた…


 「うるさい…黙れ…黙れ…黙れー!」


タンッと地を蹴ると、一気にローランとの距離を縮め、剣を振るう…

すると、振るった空間から、淡いピンクがかった花弁が舞う…


その攻撃を難なく交わしたローランは、次の攻撃を待つ…

怒りのあまり、頭に血の上った今の彼女には、自分が彼に遊ばれていると言う事すら理解できず、次の攻撃へと剣を握り直した…



そして…

刃を天に向け、右足を一歩踏み込み、下から振り挙げる…



それと共に巻き起こった突風…

その風自信に意志があるかのように、ローランに襲いかかる…


彼は、その風から逃げる事なく受け止めた…

腕を組み立ったまま、その風を浴びる…


黒い髪が、二つのピアスが、その風に揺れた…


そして、彼の皮膚に傷をつけてゆく…


風が、刃を持っているように…




 「ハァ…ハァ…」


息を荒げるルリ…

かなりの精神を使ったのだろう…

肩で息をしている…



突風を受け、頬に傷を負ったローランは、その傷に手を当てながら、笑った…


 「この程度か……この程度では、俺は倒せないぞ。」

 「!」


いつの間にかルリの目の前に現れたローラン。

ルリは驚き、剣を振るう事を忘れていた…

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