BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

部屋の中にある、小さな窓から、清らかな風が入ってくる…



その風に乗って、どこからか一枚の桜の花弁が迷い込んできた…


ヒラヒラと戸惑うように舞い、その淡いピンク色の花弁は、スヤスヤと眠るルリの枕元へと舞い降りる…




その様子を、側で腰掛けるシュウは、穏やかな表情で見つめていた…





先程まで賑やかだったこの部屋は大分落ち着き、静けさを取り戻していた…


何故なら、ここにいる皆は、スヤスヤと寝息をたてているからだ。



レオンは、後は頼んだとだけ言い残し、フジとミズハを連れて部屋を出ていき、残ったカナメとナツキは、ホッとしたのか、机に突っ伏して眠っている。


この部屋では、レナだけが真面目に仕事をこなしていた。





カナメやナツキ、レナに目をやり、再びルリへと目を戻すと、シュウは突然その場から立ち上がった。




 「っ!……」


だが、彼は椅子から立ち上がった瞬間、バランスを崩したかのように床へと崩れ落ちた…



 「大丈夫ですかっ!?」


その様子を見ていたレナは、慌てて立ち上がるが、それを制するように左手を挙げた。



 「大丈夫……ちょっと目眩がしただけだから……」

 「ですが…」



心配そうに眉を潜めるレナ。



そんな彼女に気を使わせまいと、微笑むシュウ。



 「席外すよ……ルリの事、頼んでもいいかな…?」


小刻な頭痛を抑えるように、額に手を置きながら、レナに訊く。



 「はい。」


すると彼女は笑顔で答えてくれた。

人懐っこい、可愛らしい笑みで…



シュウは、その笑みに微笑み返しながら、部屋を後にする…

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