BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
*eighth* : ~無力だとわかっていても…~
「や、止めて…くれ………」
枯れた木々が立ち並ぶ、その荒れた地に、1人の男性が命乞いをするように声を震わせていた…
「マーガレッド、それ位にしてあげましょうよ。」
「別にいいじゃん。」
傷だらけの男に馬乗りになりながら、石でできた鎌を首もとに添える、ボーイッシュな女、マーガレッド。
彼女は悪戯に笑いながら、恐怖で脅える男の表情を楽しんでいた…
そんな彼女を呆れたように止めようとする、オレンジ色の髪の女、サラ。
口ではそう言うもの、本当に止める気はないようだ。
「それは、ここに迷い込んだ無力な人間。貴女が殺す程のような物ではないですよ。」
「無力ね……でもさ、僕の快楽は“死”だから、さ……」
サラの言葉に聞く耳を持たないマーガレッドは、手にした鎌を高く持ち上げると共に口角を上げ、目にも留まらぬ速さで振り落とす…
「う"あ"ぁぁあぁーーー!!」
荒れ果てたその地の中、男の断末魔の叫び声が響き、血に染まった鳥達が、枯れた木々から飛び立った…
「サラの快楽、何だっけ?“愛”?」
血の付いた鎌を投げ捨て、頬に付いた返り血を拭いながら、問うマーガレッド…
投げ捨てた鎌は、赤く染まった石へと姿を変える…
その石を見つめ、顎に人差し指を添え、少し考えるような素振りを見せたサラは、マーガレッドの問いに答える…
「“愛”ですか……そうともいえますが……私の本当の快楽は…“操”ですね。」
いつもの穏やかで、落ち着いた様子の彼女の表情とは思えない、鋭い、何か棘を持つようなそんな目をしたサラ…
その瞳は、決してヴェインに向けられる事はない…
そんな彼女の瞳を面白そうに見つめ、マーガレッドは歩き出す…
「“操”ね………そっか。サラの能力はーーだからね。」
マーガレッドの言葉は、強く吹いた風でかき消され…
それと共に、霧に包まれた2人の姿は、その場から消えていた…
血に染まった鳥達は木に舞い戻り、鋭く血に飢えた瞳を輝かせる…
何事もなかったかのように、時が過ぎようとしていた…