BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~

崖の上に佇む、巨大な塔の中に入って行ったマーガレッドとサラの2人。

その塔の中は、闇のように暗く、冷たい風が吹き抜ける…
物静かなその中で、2人が歩む足音が妙に高く響いていた…



宙に浮かぶ蝋燭が、2人の少し前方を進み、道を案内するように、足下を照らす…

踊るように動くその蝋燭は、後をついてくる2人の影を、大きくしたり、小さくしたり、まるで、遊んでいるように変えていた…



 「所で、ローランの姿が見えないのですが、どこへ?」


突然口を開いたサラ。

その声も、大声で言った訳でもないのに響き渡り、先が見えない暗闇の中に吸い込まれて行く…


サラの言葉に、今頃…と言うような目を向けながら、問いに答える。


 「ローランは、ヴェイン様の事、好きじゃないからね。だから、自分からヴェイン様に会いに行くような事はめったにない。

それに、ヴェイン様もローランが来ない事、別に何も思ってないみたいだし。」



マーガレッドはそう言うと、前方に浮かぶ蝋燭にちょっかいをかけ始めた。


手を伸ばし、サッと掴もうとするが、蝋燭は彼女の手から逃れる…


それが面白いのか、彼女は何度も挑戦していた…


マタタビで遊ばれる、猫のように…




 「はぁ……ローランは不思議がいっぱいです。」


 「不思議?」



そんな様子を見ていたサラは、溜め息混じりに息を吐くと、再びローランの話を始めた。


蝋燭との遊びに飽きたのか、普段通り歩きだしたマーガレッドは、その話に食いつく。




 「はい。ヴェイン様の事もありますけど、先程の女の事も…

あの女、殺せていたはず。なのにどうして、殺さなかったのか…」


 「その事ね……確かにあの女を殺す事はできた。でもローランは、あの女を生かして、苦しみを与えたのさ。」


 「苦しみ?」


 「そう。だって彼の快楽は、“苦”だから…」



意味ありげに鋭く目を尖らせ、嫌味に笑った彼女。


そんな彼女の表情を見たサラは、考えるように目を泳がせる。

たが理解できなかったのか、すぐさま考えるのを止め、首を傾げたのだった。

< 277 / 397 >

この作品をシェア

pagetop