BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
その頃、額に怪我を負った、ボーイッシュな藍色の髪をした女が、頬に風を受け閉じていた瞳を開いた…
そんな彼女の瞳に映るのは、物凄いスピードで流れる家並み…
目を開けた瞬間、彼女は理解しがたいのか、何も言わずに流れる家並みを見つめていた…
数秒後、彼女はやっと自分の置かれた状況に気づいたのか、ハッと顔を上げる…
彼女が見上げた先には、黒髪に、尖った右耳に丸いピアスをした男がいた…
「ローラン…」
「起きたか?」
名を弱々しく呼ばれ、ローランは彼女を見下ろし足を止めた。
ローランは彼女、マーガレッドを脇に抱え、悠々と屋根の上を翔ていたのだ。
「僕……」
顔を下げ、何か思いだそうとぼそりと呟く…
そんな彼女を見て、ローランは脇に抱えていた彼女を下ろした…
「あの時、かなりヤバい状況だった。あの攻撃を受けていたら、死んでたぞ。」
彼の言葉を聴いて思い出したのか、額の傷に触れる…
痛みに顔を歪めながら、ローランを見上げた彼女は、助けてくれた事に礼を言うのかと思ったが…
「何で手ぇ出すんだよ!あんな攻撃……」
「はいはい、わかったから。」
負け惜しみを言う彼女を、片手を挙げて軽く制し、再び彼女を脇にかかえる。
「うわっ!放せよローラン!子供扱いするな!」
ジタバタと暴れ出す彼女を落とさないよう気をつけながら、ローランは翔て行く…
「おとなしくしてろ。あまり暴れると、傷が開くぞ。」
「もぉ開いてるよ!」
「は?」
冗談半分で言ったのに、マーガレッドは涙声で返す…
足を止めずに彼女を見下ろすと、確かに額からは血が流れていた…
「馬鹿……安静にしてないからだ……」
「ローランのせいだ!後でぶっ殺す!」
そんな事を言いながら彼の太股を殴る…
イラっとしながらも、彼は無効で歩を進めた…
知ってたから…
彼女の瞳に、微かに涙が浮かんでいた事を…
よっぽど悔しかったのだろう…
そう思いながら、彼女を抱えて翔て行く…
2人の姿は、あっという間に見えなくなった…