BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
真っ白で長い廊下を歩むライナス。
壁に手をつけノロノロとどこへ行くのか歩を進めていた。
「……気分悪ぃ………」
立ち止まって一息つくと、薬の味を思い出したのか口に手を当て青ざめる。
再び歩きだそうと足を上げると、近くで何かがぶつかるような物音が…
気になり首を傾げたライナスは、何の音か確かめようと早歩きで進み角を曲がる。
するとそこには、黒髪の少女がこちらに背を向け座り込んでいた。
「…マリン……?」
「?」
ライナスは少女にそっと声をかける。
と言うのも、いつもは結っている長い黒髪を今は下ろしている為、別人に見えたからだ。
少女マリンは名を呼ばれ振り返ると、目を細め背後に立つ人物を確認。
彼が誰なのか把握すると小さく名を呟き立ち上がった。
右目に眼帯をしている為距離感覚が掴めないのだろう、立ち上がった彼女はフラフラとしていて…
今にも倒れそうな彼女の腕をライナスは掴み支えるが、彼の手が触れた瞬間マリンは痛みに顔を歪める。
傷に触れてしまったようですぐさま手を放すと、マリンは壁に寄りかかった。
「……お前…大丈夫なのかよ………?」
体中傷だらけで痛々しい彼女の姿を見てライナスはそう問うと、マリンは彼の顔を見る事なく無言で頷くだけ…
右目の眼帯に頬の傷…
腕には所々に切り傷があり、包帯がグルグルと巻いてある…
傷の具合を伺っていたライナスは彼女の拳を見て目を止めた。
彼の目に映ったのは、何かに刺されたように空いた風穴…
爪は青白く変色し、指は血の気がなく力が入っていない様子…
酷い怪我に顔を歪めたライナスは、彼女の手首を掴むと傷口に手を翳した。
「お前にとって拳ってのは、大事な武器だろ?なのにこんな怪我しやがって………気をつけろよな………」
そんな事を言いながら短く呪文を唱える。
すると、翳した掌に暖かなオレンジ色の光が広がり、拳を覆うとゆっくりと傷口を塞いでゆく…