BLACKNESS DRAGON
~希望という名の光~
マリンの拳に空いた風穴は、後少しで完治すると思われたその時…
「……なっ………!」
ライナスは驚いたように目を見開きながら、翳していた手を放してしまった。
その為魔法は途切れ、完全には治癒できず微かに傷は残ったまま。
「何やってんだよ!?」
目を見開いたまま叫ぶライナス。
と言うのも、彼の目の前に拳が突きつけられていたからだ。
治療を受けていたマリンは何が気に入らなかったのか、ライナスの顔面スレスレの位置で拳を止め、彼を睨むとその拳を下ろし息を吐く。
「ライナスこそ、魔力は完全に回復していないある。そんな状況で助けてもらおうなんて思わないあるよ。」
そう言いそっぽを向くマリン。
怒っているのかと思ったが、すぐにこちらに向き直り笑顔を見せる。
「意味わかんねぇし……」
ライナスはコロコロ変わる態度に苦笑しながらも、頭をかき八重歯を覗かせ笑うのだった。
この広い廊下に2人の笑い声臥響き渡る中、コツコツとヒールの音を立て早足でこちらへ向かってくる人物がいた。
「やっと見つけた。マリン、どこに行ったのかと思ったじゃない。」
赤みがかったセミロングの髪をしたその女性は、2人を見てそう呟くと髪をかきあげる。
「何だ姉貴か。」
振り返りその人物を確認すると一言、期待外れと言った感じに女性カナメはライナスを睨みながらマリンに近づく。
「ライナス、あんたこんな所で何してるの?」
「あ?嫌、シュウ見ねぇからどこにいんのかなって思って。」
マリンの様子を伺いながら問うと、ライナスは頬をかきながらそう答えた。
ライナスの言葉にそう言えば…と考え込むカナメ。
「長に呼ばれてから姿を見てないわね……何かあったのかしら………」
顎に手を添えるが、何も手掛かりはないと首を傾げる。
そっか…と短く呟くライナスに、カナメの隣で大きく欠伸をするマリン。
そんな3人の元へもう1人の人物がやってきていた。