一人こっくりさん
第八章 親友
 俺は閉じかけていた瞼を再び開いた。

 俺を呼んだのは誰だ?

 チイラか?
 母さんか?
 こっくりさんか?

『優ってば、まだ寝る時間じゃないよっ! 起きて起きて!!』

 ……いや、どれでも無い。

「駿……!?」

 なんでここに!?

『家の鍵開きっぱなしだったよ〜? 無用心だなぁ』

 俺の心を読んだかのように駿は言った。

『とりあえずこっくりさんには帰ってもらおうかっ!』

「は……?」

 駿はパソコンの前まで行き、マウスをとった。

『こっくりさん、こっくりさん。有難うございました。北の窓からお帰りください』

 鳥居にあったカーソルはゆっくり移動した。

 俺も画面を凝視する。


 カーソルは、【いいえ】を指してとまった。


『あ〜、やっぱりそう簡単には帰らないかぁ』

 駿はあっさりと言う。
 こんな事態も全て予測していたかのように。

 すると、【いいえ】を指していたカーソルがまた動きだした。


   【し】

          【ね】


 その時、駿の背後から“何か”が伸びてきた。

 …………手だ。

 しかしそれはとても赤黒く、ツンとした匂いがして、手とは言い難い見た目だった。

 その手が駿の首に……

「駿!!!!」
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