一人こっくりさん
『お兄ちゃん達はもう行ったかな……』

 ふぅ、と息をつく。

 それにしてもあの優って人、お兄ちゃんの友達だったとはね。
 そうと知らなくてつい、意地悪しちゃった。

 ごめん。
 心の中で言ってみる。
 後でちゃんと口で言うから。

『さてと……』

 振り向くと、黒い影。

『お待たせ、こっくりさん』

 僕は、挑む。
 お兄ちゃんを守るため。
 もちろん、優も。

 ドゴオォン!!!!
 爆音が轟く。


『……外れたか』


 お兄ちゃんは僕が死んでから、特定の友達を作らなくなった。
 家族とも普通に話してるけど、どこか寂しげで。

 でも高校に入って、友達が出来たと言っていた。
 お兄ちゃんは嬉しそうだった。
 だから僕も嬉しかった。

 貴方だったんだ、優。
 お兄ちゃんを光の中へ導いてくれた人。

 お兄ちゃんの事はよく分からないけど、きっと
 お兄ちゃんにはあの人が、
 優が、必要なんだ。
 優にもお兄ちゃんが、必要なんだ。


 そして僕にも。
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