ショコラ~恋なんてあり得ない~
やがてあたしたちは駅前まで歩いてきた。
そう言えば、宗司さんの家ってどの辺りなんだろう。
もし電車に乗るのなら、ここで別れた方がいいか。
「宗司さん、ここでいいよ」
「家まで送るよ」
「平気だってば。痴漢が来たって負けないわよ、あたし」
「倒したことあるの?」
「あるわよ。一時期護身術を習ってたの」
高校の時に、心配性な親父に無理矢理にやらされたんだけどね。
「へえ、ちょっと教えてよ」
護身術の基礎を、身振り手振りで説明しながら、こんな話になっちゃったことに少し後悔する。
これでますます女の子には思われなくなるんだろうな。
「すごい。強いなぁ。詩子さん」
だけど。
屈託のないあなたの笑顔を見られたことで、それでもいいか、なんて思ってしまう。
ちょっと情けなさすぎるんじゃない? あたし。
嫌だわ。こんなとこで自分にヘタレ親父の片鱗を見つけてしまうなんて。