ショコラ~恋なんてあり得ない~
見た目も大事だ。
絵はあんまり上手じゃないんだけど、描いてみようか。
ノートの罫線を無視して、思うがままにペンを動かす。
ああ入れる器にもこだわりたいな。
盛り付け次第でいろんなイメージにできる。
コンコン。
小さな音が、あたしの思考を妨げる。
うるさいな。何よ。
苛立って顔をあげると、ガラス窓の向こうには予想外の人物がいた。
「……宗司さん」
「……、……」
楽しそうに口をパクパクさせてるけど聞こえない。
あたしが首を傾げると、了解したかのように店の中へ入ってきた。
「や、詩子さん。どうしたの?」
「宗司さんこそお仕事は?」
「今日は八時までの日。もうすぐ八時半になるよ?」
「え? 嘘っ」
どうやら、自分でも思っていたより集中していたようだ。
やばい。親父のゴハンつくってない。
今日は遅い……訳ないよね。今時期は暇だし。
そのうち帰ってきちゃうかも。