ショコラ~恋なんてあり得ない~
『詩子ー』
「じゃあね」
こっちから切ってやる。
携帯を睨みつけて、フンと鼻息を荒く吐きだすと、聞こえてくるのは宗司さんの笑い声。
「……ちょっと、何笑ってんのよ」
「だって。詩子さんとマスターさんっていっつもそんな感じだよね」
「悪い?」
「だってマスターさん、店で見るとちょっと怖いくらいなのに。ギャップがおかしい。詩子さんには肩なしだよねぇ」
「それはあたしに悪いって思ってるからよ、きっと」
思わずポロリと飛び出した言葉に、自分でびっくりした。
あたし、なんでこんなこと言ってるの。
「詩子さん」
宗司さんも驚いたようにあたしを見つめる。
動物みたいな澄んだ目。
イヤだなぁ。こういうのがうっかり人を素直にさせるのよ。