ショコラ~恋なんてあり得ない~
ガタンとテーブルが音を立てる勢いで立ちあがる。
それに驚き、宗司さんは目を見張ってあたしを見た。
あたしは今、どんな顔してるんだろう。
悔しいやらみじめやら腹立つやら悲しいやら。
一言では言い尽くせない感情がうごめいていて、自分では全く想像つかない。
「宗司さんの、……バカ!」
「う、詩子さん?」
「もう店に来ないで!」
そう言って、背中を向けて走り出す。
慌てて立ち上がろうとした宗司さんは、机にゴチンと足を打ちつけて、そのせいであたしが食べたポテトやドリンクの残骸が床に広がる。
ちらりとそれを確認して、外へ飛び出した。
息が切れるほどまで走り続ける。
追ってはこないだろう。
彼の性格上、あれだけ散乱してしまったゴミを片付けずには来ないと思う。
徐々に速度を落とした足が、ぴたりと止まる。
その一歩先に、滴が落ちた。
「……悔しい」
泣けるなんて悔しい。
寂しいなんて悔しい。
自分から逃げ出しておいて。
追いかけてきてほしいと思うような、そんな情けない今の自分が悔しい。