ショコラ~恋なんてあり得ない~

ガタンとテーブルが音を立てる勢いで立ちあがる。

それに驚き、宗司さんは目を見張ってあたしを見た。


あたしは今、どんな顔してるんだろう。

悔しいやらみじめやら腹立つやら悲しいやら。
一言では言い尽くせない感情がうごめいていて、自分では全く想像つかない。


「宗司さんの、……バカ!」

「う、詩子さん?」

「もう店に来ないで!」


そう言って、背中を向けて走り出す。

慌てて立ち上がろうとした宗司さんは、机にゴチンと足を打ちつけて、そのせいであたしが食べたポテトやドリンクの残骸が床に広がる。

ちらりとそれを確認して、外へ飛び出した。


息が切れるほどまで走り続ける。

追ってはこないだろう。
彼の性格上、あれだけ散乱してしまったゴミを片付けずには来ないと思う。

徐々に速度を落とした足が、ぴたりと止まる。

その一歩先に、滴が落ちた。


「……悔しい」


泣けるなんて悔しい。

寂しいなんて悔しい。


自分から逃げ出しておいて。


追いかけてきてほしいと思うような、そんな情けない今の自分が悔しい。

< 131 / 303 >

この作品をシェア

pagetop