ショコラ~恋なんてあり得ない~
「わかった。確かにそれはあたしが悪かった。でも今はお客さん少ないし」
「少なくてもお客が居ない訳じゃないんだぞ。あれだろ、あの男とケンカでもしたんだろ」
「なっ」
「ここんとこ来ないもんなー」
鼻で笑われて、悔しいったらない。
おのれ反撃したい……のに、嫌だ、何気に本気でショックだ。
じんわり目頭が熱くなってきて、慌ててそっぽを向く。
意地でも泣いたりするもんか。
「……そんなんじゃないわよ!」
「ハイハイ」
マサの方はあたしの動揺には気づいていないようで、軽くあしらうようないつもの調子で鼻歌を歌いながら厨房に行く。
くそう。いいわよね、アンタは彼女と上手くいってて。
そう言えばマサの奴、フラッペの試作品考えついたのかしら。
あれからいくつか作ってみて、自分で味見して見ているけど。
このままじゃお腹を壊しそうよ。
誰かに試食を手伝ってもらえたらいいのに。
できれば、……宗司さんに。
でも無理ね。
自分から来るなって言っちゃったんだもの。
だって、まさかあの人があんな勘違いしてるなんて。
なんとなく仲良くなってきたところでのあの発言は痛かったわ。