ショコラ~恋なんてあり得ない~
「最近、アイツこないんだな」
マサと入れ替わるように厨房から出てきたのは親父だ。
「アイツって?」
「ほら、お前にいれこんでる男」
「いれこまれてなんかないわよ。現にホラ、来なくなったじゃないの」
「それで拗ねてんだろ?」
「な、ちが……」
違くも無いか。
でも、それを親父に見透かされるのは気に入らない。
「俺としては来なくなって清々してるがな」
「なんてこと言うのよ。一応客よ?」
「娘を奪うような男は客じゃない」
「奪われてなんかいないし、あたしは別に父さんのものではありません」
「詩子ぉ」
あっさりそう言うと、親父は泣きそうになる。
惜しいな、さっきまでは格好いい父親だったのに。