ショコラ~恋なんてあり得ない~


「あの男が来るようになってから、お前がケーキやコーヒーの説明をするのを良く聞くようになった。
俺はビックリしたよ。お前は嫌々この喫茶を手伝っているんだと思っていたから。
でも、違うんだなって分かった。お前はちゃんと店の事知り尽くしてる。
だから試してみようと思ったんだよ。どういうものを提案できるのか」

「父さん」


親父と話をしているのに、頭の中では宗司さんの姿が見え隠れする。

あたしだって、嫌々してるつもりだったわよ。
だけど確かに、宗司さんにケーキの説明をし始めたら、自分でも驚くくらい色んな言葉が溢れ出てきて。

……なんなのよ。
あんなにボケっとして頼りないくせに。

あなたが、あたしを引き出していてくれたんじゃないの。


胸がキュッと詰まる。
何なのこれ。

二日酔いのムカムカにもちょっと似てるけど、それよりずっと全身に響く。

しかも厄介そうなのは、これがずっと続きそうだってことよ。

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