ショコラ~恋なんてあり得ない~
「だから、まあお礼してやってもいいかなと思ってさ」
「お礼って?」
「試作品の判定を俺だけでやるってのも偏りあるしさ」
「はぁ?」
ちょ、ちょっと待ってよ。
親父何考えてる?
「だからアイツを呼べよ」
「何言って……」
「来週の月曜、開店前に試作品の試食会するから来いって、そう言ってみろよ。仕事は夕方からなんだろ?」
「父さん、どこまで聞き耳立ててんのよ」
「だって心配だろう。お前は可愛い一人娘なんだから」
「それはプライバシーの侵害です」
怒ってそう言うあたしの肩をポンと叩いて、親父は厨房に戻ろうとする。