ショコラ~恋なんてあり得ない~
「待ってよ。じゃあ父さんが電話してよ。あたし……かける理由が無い」
「理由は、『試作品の試食』って言えばいいだろ」
「言えないよ」
「じゃあ、『店に忘れ物してます。取りに来てください』とでも言えばいいだろ。俺は連絡先なんか知らないんだからかけれない。
詩子、頼んだぞ」
「ちょっと!」
さっさと奥に入って行ってしまって、あたしは一人カウンターに残される。
ちょっと、どういうこと。
何この新展開!
「宗司さんを?」
呼べって?
あたしが来るなって言ったのに?
「勘弁して……」
だけど、案外と頑固な親父を説得できる訳もなく。
頭を悩ませたまま、一日の仕事が終わるのを待ち続けた。