ショコラ~恋なんてあり得ない~
*
「詩子、もう上がっていいぞ」
休憩のコーヒーを飲みながら親父が言う。
「で? でもまだ静香ちゃん来てないわよ?」
「もう客もまばらだから大丈夫だ」
確かに。店内には一組のカップルだけ。
別に三人で顔付きあわせなくったっていいか。
親父の言葉に便乗するようにマサも頷く。
「そうそう。詩子が居ると俺も試作品づくり出来ないから」
「マサ、店でやってるの? それずるくない?」
「仕方ないだろ。俺の方が店にいる時間長いんだから。ここでやらないとやる時間無いんだよ」
「ちっ」
まあそうか、マサは閉店までいるもんな。
安月給なのに良く働いてくれてるわよ、感謝してる。