ショコラ~恋なんてあり得ない~
「じゃ、先に帰るわ」
「詩子、電話するの忘れるなよ」
「父さん、しつこい!」
そんな事言われなくたって、一日中頭から離れなかったわよ。
電話番号はわかる。
前に、財布を忘れて無銭飲食した時に、連絡先として聞いている。
時計を見れば午後四時半。
いつもよりは早い上がり時間だ。
とりあえず親父たちに聞かれたくは無いので店は出よう。
少し歩けば団地の一角に公園がある。
あたしはそこの鉄柵に寄りかかって、遊具で遊ぶ子供たちの声を聞きながら携帯電話とにらめっこ。
宗司さんは……もう仕事中かな。
何時からだったっけ。忘れちゃったわ。
まあ、忙しければでないだろうけど。
でも忙しくなくてもでないかもしれない。
あんな風に言ったあたしの電話からなんて。