ショコラ~恋なんてあり得ない~
「実際、やってみれば店の経営は大変だ。こだわればこだわるほど、原材料にばかり金がかかる。
迷ってた俺に光を差してくれたのは、詩子。お前だ」
「あたし?」
「そう、お前が店を手伝ってくれるようになって驚いた。
客が笑顔で帰っていく。嬉しそうにまたやってくる。
それはお前の容姿目当ての奴もいただろうけど、その接客態度に好感を持ってくれたのも大きいと思う」
「そんな」
こんな風に褒められたことなんてないから、
何だか恥ずかしい。
腰の辺りがむずがゆいわ。
「お前を見ていたら、俺も自分の足りない部分が分かってきた。でもまだ及ばない。
この店が、こうして常連客にも恵まれるのは、俺やマサの作るもののお陰だけではないんだ。
詩子のその客目線の視点や、アイディア。そういうものが大事なんだ。
だから、『ショコラ』には、詩子もそしてマサも必要な人材なんだ」