ショコラ~恋なんてあり得ない~
「和美ちゃんっていくつだっけ」
「私? 十九です」
「あーん、まだ飲めないのかぁ。誕生日来たら一緒に飲みに行きましょうよ」
「あはは。嬉しい。詩子さんって飲めるんですか?」
「あたしはザルよー。いくらでもこいだわ」
和美ちゃんは、私の本性を知っても変化のなかった数少ない人間の一人。
だから気楽に話せて楽しい。
……なんて、和やかに話していると、カランとベルが鳴った。
お客様だ。
「いらっしゃいませ」
お愛想用の声でそう言い顔をあげた時、そこ見えたのは汗だくの青年だった。
「あれ」
「はあ、あの、さっき、すいません……した」
無銭飲食した優柔不断男だ。
レジの前まで来て激しく息を切らせる男に、和美ちゃんはビックリしたように目をきょろきょろさせる。