ショコラ~恋なんてあり得ない~
14 それぞれのポリシー
生ぬるい夜風が体にまとわりついてくる。
もう夏も本番ね。夜になったってちっとも涼しくならない。
「和美!」
居酒屋を出たところで、マサが息を切らせてやってきた。
「マサさん!」
和美ちゃんは嬉しそうに笑顔を見せて、おぼつかない足取りでマサに近付く。
マサは一瞬ぎょっとしたような顔をして。
それでも、くっついてくる和美ちゃんの肩を抱きよせた。
「詩子、和美に結構飲ませたのか?」
「そんなに飲んでないわよ。二杯くらい」
あたしは、五杯空けてるけど。
そんな事マサに細かく報告する必要もない。
「マサさぁん。昨日はごめんなさい」
酔ってこれだけ素直になれるんなら可愛いものだ。
あたしがここに居るのもお邪魔だから早々に退散する事にしよう。
「じゃあ、あたしは帰るわよ。後は二人でごゆっくり」
「おい、駅までは一緒に行こうぜ。危ないぞ?」
「大丈夫よ。痴漢ならやり返してやるから。あたしの心配は無用。じゃあね!」
そう言って、駅の方まで駆け出す。
とはいえ飲んでるから、ちょっと頭が回るなぁ。