ショコラ~恋なんてあり得ない~
「詩子が作ってるんじゃないのね」
「まあね。あたしじゃこんな風に上手くは飾れないもん」
「でも詩子の発案なんでしょ?」
「そう。まあ食べて見て。あたしの初の採用作品だからね」
「そうね。頂きます」
デザートだっていうのに、丁寧に掌を合わせるところは変わってない。
バリバリ仕事して格好いいお母さんって感じだったけど、妙に礼儀には厳しくて。
母さんは、あたしの理想だった。
味を確認するように口に含んで、ゼリーが出てきた時は目を丸くして。
食べてる表情を見てるだけなのに、会話でもしてるみたい。
こういうのって、楽しい。
これは、裏で作ってばかりいる親父やマサでは中々味わえないことよね。
そうやって見ると、ウェイトレスはあたしには向いているのかも、なんて思う。