ショコラ~恋なんてあり得ない~
「ふう、おいしかった。ごちそうさまでした」
小さな氷粒一つ残さずに食べた母さんは、やっぱり最後も両手を合わせてそう呟く。
「綺麗に食べてくれてありがとう」
「ううん。すごくおいしかった。アイデアもいいわね」
優しい目で見られると何だか嬉しくなっちゃう。
「でも」
「え?」
「どうして隆二くんは詩子に作らせないのかしら」
「そりゃ、あたしが不器用だからでしょ。
実際、あたしは店に出せるほど綺麗に飾りつけが出来ないのよ」
「でも詩子の発案だわ。最後まで任せて見ればいいのよ。
詩子は腹立たないの? 折角の自分のアイディアを、あの男の子に持ってかれたようなものなんでしょ」
「マサはパティシエよ。雇われてるんだから言われたものを作ってるだけよ。
持ってかれたとか取られたとかいう意識は、あたしには無いわよ?」
「そう……」
一つ溜息をついて母さんはあたしを見る。