ショコラ~恋なんてあり得ない~
15 母の告白
仕事を終え、駅までの道を歩きながら母さんに電話を入れる。
『ちょっと遠いけどおいしい店に連れて行ってあげる』
なんて言われるとちょっと期待しちゃう。
母さんは雑誌社に勤めていて、以前はグルメ雑誌を担当したこともあるから、舌は確かだ。
その舌のお陰で親父と出会ったんだって聞いたことがある。
待ち合わせは駅前。
あたしよりもメリハリの利いた体型の母さんは、一瞬人目を引く。
あたしの外見が清楚なお嬢様であるとするなら、母さんの外見は大人の色香を漂わせる理知的な女性という感じ。
「詩子、こっちよ」
にっこりと笑うと近寄りがたい雰囲気が緩む。
あたしも何故かちょっとホッとして近寄った。