ショコラ~恋なんてあり得ない~

「電車に乗るんだけどね」


連れられるまま最寄駅から三駅、乗り換えてもう一駅乗ったところで降りる。
母さんのことだからフレンチっぽいおしゃれなお店なのかなとか思ったら、そこは鍋の専門店だった。

「夏に鍋?」

「大丈夫、店内は冷房効いてるから。夏は胃が疲れてるから温かいもの食べた方がいいの。ここのコラーゲン鍋、おいしいのよ。」

「へえ」


コラーゲン。魅惑の響きだな。

お肌ツヤツヤになったりするのかしら。


「いらっしゃいませ。あれ、桂木さん、今日は女の子とですか?」


桂木は今の母さんの名前だ。結婚前の姓に戻っている。

快活そうな若い店員さんはあたしをまじまじと見ると、お愛想よく笑った。


「妹さんですか? 似てますね」


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