ショコラ~恋なんてあり得ない~
「だから、あたしじゃお店に出すには盛り付けが下手で……」
「そのあたりも含めて、受け止めてくれる度量が欲しかった訳、私としては」
「母さん」
前髪を手でかきあげる。
手で目元が隠れてしまったから、母さんの表情が分からなくなった。
「『ショコラ』を立ち上げる時、私は反対した。それは、隆二くんが私の意見を聞いてるようで聞いてくれなかったからよ。
あの人はいつもそう。変にこだわりが強すぎて人の意見を聞き入れない。
そして、私はそれがずっと不満だったの。
結婚して一緒に居て。私は人生のパートナーで居たかった。
だけど、彼は一人で決めてしまう。私なんて、経済支援するだけの存在でしかなかったのよ」
「そうかな。おや……父さんは母さんの事今でも好きそうだけど」