ショコラ~恋なんてあり得ない~
「そうね。でも一番じゃない。彼の一番は『ショコラ』よ。
あの時にそれが分かった。
私は欲張りだから、自分を一番に想ってもらえないと嫌なのよ」
「じゃあ、今度結婚する人は母さんのことが一番なの?」
「……今のところはね」
掌がようやくテーブルに戻る。
母さんが少し悲しそうに見えて、あたしの胸まで痛む。
「ほら、食べなさい」
「あ、うん」
「男と女って色々あるわよ。詩子も何か困ったら相談しなさい。隆二くんよりは役に立つと思うわよ」
「あはは。確かに」
「それに仕事の事も」
「え?」
神妙な顔で、あたしの顔を覗きこむ。
「もし、詩子が今と違う仕事がしたいって思ったなら、いつでも私のところに来なさい。いくらでも支援してあげる。
あの人のところに居たら、『ショコラ』から抜け出せないでしょう?
今回のフラッペと同じような事がこれから何度も起こる。
詩子はそれで納得できる?
自分のアイディアを人に作られ続けて納得できるの?」