ショコラ~恋なんてあり得ない~

母さんの言葉は、電気みたいにビリビリとあたしの体内を駆け巡った。

確かに、ケーキ屋よりラーメン屋がいいと思ってた。
ウェイトレスなんて似合わない、そう思っていたこともある。


だけど。


『詩子さんは、この仕事好きでしょう』


そう言ってくれた宗司さんの、優しい眼差しが頭に浮かぶ。


『迷ってた俺に光を差してくれたのは、詩子。お前だ』


そう語った、親父の言葉も。


目をつぶって『ショコラ』と違う場所で生きる自分を思い描く。

あたしの性格なら、多分どこでだって生きていける。
表面上いくらでも取り繕うことが出来るし、この外見は人からは嫌われない。


でも、『ショコラ』と違う場所には、親父がいない。


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