ショコラ~恋なんてあり得ない~
いじけたように曲がる大きな背中。
良く涙目になる瞳と皺の寄った目尻。
ヘタレで呆れることも多いけど、長く伸びたその器用な指先は尊敬してる。
親父は、あたしを形作る上で間違いなく必要な人だった。
そして多分、これからも。
宗司さんに出会う前は、それに気付けなかった。
でも、今は分かる。
彼はいつもあたしの知らないあたしを引き出してくれるから。
あんなにぽやっとしてる癖に、彼は外見上のあたしでも、心の中で毒づいてるでもあたしでもない、隠れてたあたしを見つけ出してくれたから。
頭の中に、光が差し込んでくるような感覚。
ゆっくり目を開けると、心配そうな顔の母さんが見える。
たまにしか会わない母さん。
あたしのこと心配してくれてるのかな。