ショコラ~恋なんてあり得ない~
あたしは母さんに笑いかけた。
「……あたしは、あそこがいいのよ。接客業が好きだし。
『ショコラ』はもはや父さんだけの夢じゃない。
あたしだって、一緒に作って来たんだから。
そう思うくらいには、父さんだってあたしのこと認めてくれてると思う」
あたしの事、ちゃんと必要だって言ってくれたもの。
『ショコラ』にはあたしもマサも欠けてはいけない人材だって。
「だから、あたしはあそこで頑張りたい。
父さんに、お前は要らないって言われるまでは」
「隆二くんは詩子を手放す気なんかないわよ。
ポロっと言ってみただけで昨日凄い剣幕だったわ」
「そうなの?」
「うん。再婚の事と、もし詩子が望むなら、一度『ショコラ』から離してあげればって言ったの。
高校からあそこで働いて、要は他の可能性を試していない訳じゃない。
私は、詩子は何でもできると思う。
もっと楽に稼げる仕事にだってつけると思ったのよ。
……でも、余計なおせっかいだったみたいね」
「母さん」