ショコラ~恋なんてあり得ない~

16 父の気持ち


 一番近い駅で母さんと別れて、違うホームに向かった。
まだ九時台だから電車はたくさんある。

待つ間に、親父に電話をかけることにした。


『詩子か?』


数コールで繋がった電話の先の心配そうな顔が目に浮かぶようだ。


「うん。今から帰るから。まだ早いから一人で帰るわよ」

『迎えに行く。駅前で待ってるからな』

「平気だって」

『いいから』


そのまま電話を切られる。
あたしは溜息をついて、携帯を鞄に戻した。

すぐにやってきた電車に滑るように乗り込み、流れる景色を眺めた。

ぽつりぽつりとあるライト、夜の闇より濃い建物の影。
夜の景色は綺麗だけどどこか寂しい。

そう思うのは一人で見てるからなのかしら。

何だか母さんを思い出す。
あんなに綺麗なのに、時折りふっと寂しそうに見える母さん。

良いのかな、ホントに再婚しちゃって。
親父の事、本当にもう好きじゃないのかな。
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