ショコラ~恋なんてあり得ない~
はぁ? 本気で毎日食う気?
そりゃこっちは商売繁盛でいいけど。
そんなに金持ってんの?
なんて、若干……いや、かなり疑っては見るものの、一応お客相手にそんなことも言えず。
「……ご一緒にお飲み物はいかがですが」
なんて、ファーストフードの店員みたいなことを言ってみる。
「えっと、あー」
ここでも彼は素直に悩みだす。
しまった。再びシンキングタイム?
これ以上待つのは嫌よ。
「……ケーキが甘いので、普通のブレンドがお勧めですが」
「じゃあそれで」
男もホッとしたように同意する。
「注文、聞こえたよ、ね」
視線だけをあげてマサにそういうと、彼は静かに頷いてコーヒーを入れ始めた。
いい匂いが漂ってきてホッとする。
ちょっと……いやかなり、今のやり取りに動揺した。
嗅ぎ慣れた匂いにこんなに救われた気持ちになるとは驚きだ。
目の前の優柔不断男は、特に来にした様子もなくニヘニへしている。
忙しければ構う必要ないのに。こんな時に限って結構手持無沙汰だ。