ショコラ~恋なんてあり得ない~


「……康子さん、お前に『ショコラ』辞めろって言わなかったか?」


ポツリと、ホントにホントに小さな声で親父が言う。

親父の頭の中は色んな事がぐるぐる回ってるみたい。
話が変わり過ぎてついていけないったら。


「言わないわよ。やめるなら支援するわよ、とは言われたけど」

「で、なんて返事した?」


親父が立ち止まってあたしを見る。


「やめないわよ。あたし、『ショコラ』が好きよ。
自分に商品を作る技術が足りないのは悔しいし情けないとも思ってるけど。
あたしにしかできないこともあるわ。
父さんだって、まだまだあたしが必要でしょ」

「当たり前だ。まだまだどころか、ずっと必要だ」


真剣な眼差しでそんな風に言われると何だかくすぐったい。
それにちょっと嬉しいや。やっぱりあたし、必要なんだよね?

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