ショコラ~恋なんてあり得ない~
17 二次試験の直前に
夏場の喫茶店は涼を求めてくる人が多い。
慌ただしく飲み物を出したり下げたりしていると宗司さんがやってきた。
「ちょっと待ってて」
彼が言葉を発する前に、勝手にアイスコーヒーをカウンターの一席に出す。
あたしは今忙しいのよ。
お客を見て、少し間が空きそうならグラスを洗って、ストローの補充をして……ああもう、手一杯!
その合間に、宗司さんにケーキも出す。
「これでいい?」
「うん。ありがとう」
ムースがメインになってるケーキ。夏場は舌触りが良くて人気だ。
「ありがとうございました」
立て続けに三組のお客が帰ると、ようやく一息つける。
首を曲げながらカウンターの前に立つと、宗司さんが浮かない顔でケーキをつまんでいた。