ショコラ~恋なんてあり得ない~

「詩子さん……」


そっと近付いてくる宗司さんの手は、あたしの頬を撫でた後背中に向かう。

座りこんだままのあたしを、包み込むように彼がしゃがんで抱きしめてくれた。


「そ、宗司さん」


再び全力疾走後のようになる動悸。
声も上ずってしまいそう。


「こんなにいい事あったら、俺やばい」

「い、いいことって」

「さっきはうっかり言っちゃったけど。俺も、詩子さんが好きだよ」

「宗司さん」


彼の声も震えてて、あたしはその背中を撫でてみた。
その動きにくすぐったそうに体を揺らす宗司さんが、何だか愛おしい。


「今までの運の悪さは、詩子さんに出会うためだったんじゃないかってほど、今ラッキーだと思ってる」


嬉しいけど、それは言いすぎじゃない?


「でも、……俺、明日が面接なんだ」

「……は?」


思わず体を離す。

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