ショコラ~恋なんてあり得ない~
「……暑い、ね」
「うん」
ポツリとこぼした宗司さんの呟きをきっかけに、体を離した。
目を合わせるのも恥ずかしくて、お互いあっちとこっちを向きながら、それでも手をつないだまま『ショコラ』の方へ歩き出した。
店の近くまで来ると一度ギュッと強く握ってくれる。
「俺、頑張るね」
「うん。大丈夫だってば、自信持って」
「ありがとう、詩子さん」
名残惜しく、あたしたちは中々手を離せずにいたのだけど。
じきに妙な視線を感じて店の方を見ると、何故か親父が窓ふきをしながらこっちを見ている。
サイテー。
普段窓ふきなんかしない癖に。
つか、営業中にやるなよ、それを。