ショコラ~恋なんてあり得ない~


「……暑い、ね」

「うん」


ポツリとこぼした宗司さんの呟きをきっかけに、体を離した。

目を合わせるのも恥ずかしくて、お互いあっちとこっちを向きながら、それでも手をつないだまま『ショコラ』の方へ歩き出した。

店の近くまで来ると一度ギュッと強く握ってくれる。


「俺、頑張るね」

「うん。大丈夫だってば、自信持って」

「ありがとう、詩子さん」


名残惜しく、あたしたちは中々手を離せずにいたのだけど。

じきに妙な視線を感じて店の方を見ると、何故か親父が窓ふきをしながらこっちを見ている。

サイテー。
普段窓ふきなんかしない癖に。

つか、営業中にやるなよ、それを。

< 256 / 303 >

この作品をシェア

pagetop