ショコラ~恋なんてあり得ない~
『はい?』
「宗司さん? 詩子です。今ねぇ、駅に向かうところなんだけど、どこにいる?」
『駅っていつもの駅? 俺まだ塾にいるよ。送って行こうか?』
「うん。じゃあ待ってる」
電話を切ったと同時に安堵のため息。
軽い調子で話してるようだけど、実は緊張してるのよ。
最寄駅まで電車に乗って、改札を抜けるときょろきょろと辺りをうかがう宗司さんが見える。
あら、あたしの方が遅かったのか。
「ごめん。宗司さんお待たせ!」
「詩子さん。良かった。また変な男に絡まれたりしてんじゃないかと思って」
「あはは。大丈夫よ」
いつもの顔で笑う宗司さん。
頼りないところも一杯あるけど、その笑顔にあたしは癒されたり励まされたりしてるんだろう。
さっきまでの寂しさが埋まっていくみたいにホッとする。