ショコラ~恋なんてあり得ない~
「お前は、勉強につまづくタイプの子を教えてやりたいんだよな?
進学のための勉強じゃなくて、学ぶことを楽しませたいんだ。違うか?」
「違いません。でも、……そういうのは社会に求められていないんです。
仕事ですから、やりたいことではなく望まれてる事をしなきゃいけないんです」
「そうだな。それも一理ある。
でもな、無ければ作るって手もあるとは思わないか?」
親父はポンと手を叩くと、今度はあたしとマサを見た。
「父さん?」
「マスター、あの、どう言うことですか?」
「大分前から考えていたんだが、店舗を改装しようと思ってるんだ。
ケーキのみを販売して欲しいって客も結構多くてな。
喫茶店スペースの脇に販売用の陳列ケースを置きたいと思ってる」
「へぇ」
確かに。
ケーキの持ち帰りの要望は結構ある。
前に、誕生日のケーキを作って欲しいと頼まれたことだってあったはずだ。
ケーキ屋じゃないからって一度は断ったものの、あまりにも熱烈だったから引き受けたんだっけ。