ショコラ~恋なんてあり得ない~

「良いんですか?」

「貸しだすことには問題ない。ちゃんと賃貸料ももらうつもりだからな。
ただ、今勤めてる塾とも、求める生徒層が違うとはいえ揉めるだろう。
それに経営するとなれば、それなりの責任も出てくる。
お前がそのあたりの覚悟を出来るかどうかは、俺には分からない。
そこは自分で考えろ」

「……はい」


宗司さんは、噛み砕くように頷く。
そのまま視線が宙を見つめ始めた。

なんか考え込んでるな。
これはしばらくかかりそう。


親父はその後、マサの方を見る。


「マサ、お前には、ケーキ販売の方の責任者になって欲しいんだ」

「え? 俺ですか?」

「そうだ。正直俺一人では、ケーキ販売は無理だと思っていた。
手が回らないからな。

でも今のお前なら十分『ショコラ』としてのスイーツが作れる。
俺と一緒に、ケーキ作りをこれからも頑張ってくれないか」

「マスター。俺の事そこまで買ってくれてるなんて!」


マサは瞳を潤ませて親父の手を握る。

まあそうだよね。
アンタは元々親父の腕に惚れこんでこの店に入ってきたんだし。

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