ショコラ~恋なんてあり得ない~
改装するってことは、また借金抱えるってことでしょ?
新築時に作った借金を返したのは、今年に入ってすぐだ。
ようやく返し終えたのにって思いはある。
だけど、宗司さんがやりたいこと出来て、あたしの傍にいてくれるんなら確かにあたしも万々歳で。
『ショコラ』に必要なマサも、結婚しなくても確保できる。
認めるのは悔しいけど、中々やり手じゃないの親父。
「良いと思う。皆で頑張りましょ?」
「よし、決まりだ」
「詩子さん、俺頑張るよ!」
そんな訳で、厨房で皆が顔を突き合わせて声を重ねる。
まるでスポ魂みたいな雰囲気に、注文を聞いてきた静香ちゃんがオロオロして。
「あの、あの。サンドのオーダーなんですが」
か細い声でそう言ったのがあたしには面白くて、思わず声を出して笑ってしまった。
その後、細かい話を詰めようかと思ったものの、親父の中ではだいぶ前から構想していたものらしく、明確なビジョンができていた。
工事とかの相談は業者さんを決めてからになるから、すぐどうこうという事はなく。
宗司さんは今年の終わりまで今の塾に勤めながら、経営ノウハウとか自分がしたいことのイメージをきちんと固めるのだそう。
あたしたちも今まで通り、改装工事日まではこの『ショコラ』を維持していく。
そんな感じで話は決まった。