ショコラ~恋なんてあり得ない~
しかも何でそれをマサから怒られなきゃならないわけ?
オーナーの娘なのはあたしなのに。
まるでマサの方がこの店の権力を握ってるかのように。
マサを睨みつけてやりたい衝動にも駆られつつ、でも今はあたしに分が悪い。
「別な日でもいい?」
「今日の会計の計算が合わなくなる」
低姿勢でいってみるもすげなく返される。
「……やっぱり?」
そのタイミングで、夕方からのバイトの静香ちゃんがやってきた。
あたしは大抵、静香ちゃんが来たらあがっていいことになってる。
「こんにちはー。あれ? 詩子さん、変な顔してどうしたんですか?」
「や。別に。じゃあ、あたし上がるわ。静香ちゃんよろしく」
「はい」
三千円とあの男の連絡先をくしゃりと握り締める。
ふざけんじゃないわよ。
今日は不機嫌なまま仕事終わりを迎えたって言うのに、その原因に対してもう一仕事しなきゃならないなんて。
ホントにもう、やってらんない!