ショコラ~恋なんてあり得ない~
「それに、……もうあの二階に康子さんが来ることもないだろうしな」
ポツリと呟いた親父を見ると、何だかとても寂しそう。
あたしや宗司さんやマサには、あんなに強気に出れるのに、どうして母さんにはダメなのかしらね。
不思議だけど、それは父さんにとって母さんが特別だって事なんだろう。
ふと閃いて、親父をじっと見つめる。
今回のお礼って訳じゃないけど。
だったら、あたしが背中を押してあげてもいいわ。
「父さん」
「ん?」
「あたし、母さんと一緒に住みたい」
「は?」
親父の動きが止まる。
あと四分の一くらい残っているグラスに、スプーンが落ちる。