ショコラ~恋なんてあり得ない~
4 大嫌いな男
厨房の端っこに丸椅子を置き、そこに座って溜息を一つ。
「はぁ」
今は午後五時。
学習塾の先生って、今頃から仕事なんじゃないのかしら。
だったらほら、仕事の邪魔しちゃいけないし。
なんて、あたしの中の悪魔が囁くけど、同時に存在する天使が他の可能性も示しだす。
でも、日曜ってやってるの?
あの人の生徒、小学生だったみたいだけど。
それに、よりによって連絡先として携帯電話の番号まで押さえてしまっているのだ。
連絡が取れずに後日になりました、とは言えない。
「詩子。ヒマならこれ運んでくれよ」
「うっさい、父さん。あたしの勤務時間はもう終了!」
「じゃあなんで帰んないんだよ」
「あーもー。聞かないで!」
そんなの、やりたくないことしなきゃいけないからに決まってんでしょ!!
「夕飯、カレーが食いたいな」
頭を抱えるあたしに向かって、呑気な事ばかり言う親父。
むかつくわ、ホント。
食事だって、親父がいなきゃコンビニ弁当で済ませられるのに。