ショコラ~恋なんてあり得ない~

「ありがとう。父さん」


聞こえないくらい小さな声でそう呟く。

届かなくても大丈夫。
一緒にいることで伝わっていく。

だってあたしたちは家族であり、一緒に働く仲間だもん。


「おはようございます」

「あ、宗司!」


そこへ間の悪く現れるのは宗司さん。

ようやく和んだ空気が、親父と宗司さんの間だけ固くなる。


「あれ、マスター? え? あ?」

「お前、覚悟は出来てるんだろうな。俺の一人娘を……」

「もうばれたんですか?」

「ばれたとか言うな! 先に断ってからしろ!」

「もう! デカイ声で変な事言わないで。
父さんはあたしのことに口出し過ぎ! もう大人なんだから放っておいてよ!」

「そんな事言うなぁぁぁぁ。詩子ぉぉぉ」

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