ショコラ~恋なんてあり得ない~

怒られてた……んだよね。

何かやらかしちゃったのかしら。
まあやらかしそうなほどボケっとした人だけれども。

それでもあんな風に叱られたらヘコむよね。


そう言えばあたし、ずっと『ショコラ』の手伝いばかりしてたから、普通のお勤めってしたことないんだわ。

全く知らない人から雇用されるっていうのは、案外厳しいことなのかしら。
叱られても、文句なんか言えないもの?

そう考えると、色々不満もあるけどそれをそのまま言葉にして許される環境ってのは恵まれてるのかしら。



 空がどんどん暗くなってきて、吹く風も冷たくなってきた。
 
だけど、何だか動けない。

あんなとこ見られた後で、あの人だってあたしに会うのは気まずいはず。

お金に関してはマサにでも立て替えてもらって、お釣りは後日彼に確実にお届けすれば問題ないだろう。

つか、先に店で清算しておつりだけ持ってこればよかったんだわー。
もう何で今頃気づくかな。

とにかく帰った方がいい。

そう思うのに、なぜかその場を動けなかった。
どうしてなのか、理由は自分でも分からなかったけれど。


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